「ふらつく、つまずくことが増えた」高齢者、なぜ歩くことが重要なの?

高齢者にとって「歩くこと」は、身体的・心理的・社会的な健康を維持するために非常に重要です。

【歩くことの重要な理由は?】

〈筋力や体力の維持〉
歩行は、下肢の筋力や体力を維持・向上させる基本的な運動です。
これにより、日常生活で必要な動作(立つ、座る、階段を昇るなど)がスムーズに行えるようになります。

〈転倒や骨折の予防〉
定期的な歩行は、筋力やバランス感覚を向上させ、転倒リスクを低下させます。

骨にも負荷がかかることで、骨密度の維持にもつながり、骨粗鬆症や骨折の予防にも役立ちます。

〈心肺機能の向上〉
歩くことで、心臓や肺に適度な負荷がかかり、心肺機能が改善します。これにより、日常生活の活動量を増やしやすくなり、疲れにくい体を作ることができます。

〈認知機能の維持〉
歩行などの有酸素運動は、脳への血流を増やし、認知症の予防や進行の遅延に効果があるとされています。
特に散歩など外での歩行は、視覚や聴覚など多くの感覚を刺激するため、脳の活性化に寄与します。

〈精神的な健康の向上〉
ストレスの軽減
:歩行によってストレスホルモンが減少し、リラックス効果が得られる。
うつ症状の予防:外出して歩くことが気分転換や孤独感の軽減につながります。

 〈社会的つながりの促進〉
外に出て歩くことで、他者との会話や交流の機会が増えます。
これにより、孤立感の解消や精神的な健康維持が期待できます。

〈日常生活の自立維持〉
歩行能力が維持されると、自分で買い物や家事などの日常生活動作が可能になります。
これにより、介護の必要性が軽減され、自立した生活を長く続けることができます。

〈寿命の延長〉
定期的に歩行を続ける高齢者は、病気になるリスクが低下し、健康寿命が延びる傾向があります。
適度な運動が全身の健康維持に役立つことが証明されています。

【高齢者が歩けなくなる原因は?】

《身体的な原因》

〈筋力・体力の低下(サルコペニア)〉
加齢に伴い筋肉量や筋力が減少し、特に下肢の筋力低下が歩行に大きく影響します。
運動不足や栄養不足が進行を加速させることがあります。

〈骨や関節の問題〉
骨粗鬆症
:骨がもろくなり、骨折のリスクが高まる。
関節疾患:変形性膝関節症や股関節症などの関節疾患が歩行を困難にします。
脊柱管狭窄症:腰痛や脚のしびれで長時間歩行が困難になる。

〈痛み〉
関節炎や腰痛など慢性的な痛みが歩行を妨げる。

〈神経系の障害〉
脳卒中
:半身麻痺やバランス感覚の低下。
パーキンソン病:動きがぎこちなくなり、歩行速度が遅くなる。
末梢神経障害:糖尿病などが原因で足の感覚が鈍くなる。

〈心肺機能の低下〉
心臓や肺の働きが低下し、持久力が減少。
疾患(心不全、慢性閉塞性肺疾患など)があると歩行が困難になる。

《心理的な原因》

 〈転倒への恐怖〉
過去に転倒経験がある場合、再び転倒するのではないかという恐怖心が歩行を避ける原因となる。

〈うつ症状〉
活動意欲の低下により外出や歩行の機会が減る。

〈自信喪失〉
自分の体力や健康状態への不安から動くことを控えるようになる。

《環境的な原因》

〈生活環境の影響〉
家の中や外に段差や滑りやすい床があると、歩行が危険に感じられる。
バリアフリー化が進んでいない場合、移動が制限される。

〈歩行補助具の不適合〉
杖や歩行器が適切に使用されていない場合、逆に歩行が困難になることがあります。

〈社会的孤立〉
外出する機会が減ると歩行能力も低下しやすくなります。

【高齢者が歩行を維持するにはどうすればいいの?】

《筋力と体力を維持する》

〈運動習慣を取り入れる〉
下肢筋力トレーニング

スクワットや足踏み運動で脚の筋肉を鍛える。
椅子に座って行う簡単な運動(足の上げ下げなど)も有効。

有酸素運動
散歩やウォーキング、水中歩行などを日常に取り入れる。

〈柔軟性とバランスを鍛える〉
ストレッチやヨガで柔軟性を保つ。
片足立ちや椅子を使ったバランス練習を行う。

《心理的サポート》

〈転倒への恐怖心を軽減〉
転倒防止策を整えることで自信をつける。
転倒後の心理的支援も重要。

〈社会参加を促進〉
外出機会を増やし、他者との交流を通じて活動意欲を高める。

〈ポジティブな目標設定〉
「毎日10分歩く」など、達成可能な小さな目標を設定する。

《安全な環境を整える》

〈適切な歩行補助具の使用〉
杖や歩行器を使い、無理のない歩行を実現する。

〈自宅のバリアフリー化〉
手すりの設置、滑り止めマットの使用、段差の解消。

〈履物の選択〉
滑りにくく、足にフィットする靴を選ぶ。

《日常生活での工夫》

〈こまめな移動〉
座りっぱなしを避け、1時間ごとに立って歩く。

〈家事を活用〉
洗濯物を取り込む、庭の手入れなど日常的な動作を増やす。

〈散歩ルートを設定〉
近所の公園やショッピングセンターなど、歩く場所を決めると習慣化しやすい。